平成17年に発覚した構造計算書偽装問題では、建替えを含む大規模な補修工事が必要となりましたが、事業者が倒産したため、マンション購入者が多額の費用負担を抱えることになりました。こうした状況を踏まえ、事業者が倒産した場合でも、補償金を受けられるよう「住宅瑕疵担保履行法」が制定され、平成21年 10月1日からスタートしています。
住宅瑕疵担保履行法では、新築住宅の売り主などが瑕疵保証を確実に履行できるようにする資力の確保策として設けられた「住宅瑕疵担保責任保険」のほかに、住宅建設工事の請負人などが瑕疵により生じた損害などを補てんするための「任意保険(2号保険)」も規定されています。この2号保険の一つとして、住宅瑕疵担保保険法人(現在6社)が開発したマンションの大規模修繕工事を対象にした保険商品が今年より徐々に認可されはじめ、販売も本格的に始まっています。大規模リフォームを対象に第三者保証を行っているケースは既にありますが、同法に基づく保険商品は再保険の対象となるため、消費者側にとってはより安全性が増すメリットがあります。
大規模修繕工事で瑕疵等が発覚すると、工事実施当時のマンション管理組合役員の責任が問われる可能性があります。これが大規模修繕工事に及び腰になる一因ともいわれており、保険に加入していればこうした懸念を軽減できます。保証能力が比較的小さい中小の工事業者にとっては、保険加入が工事を受注する際の信用性の補完につながります。
保険を利用する場合は、構造物全体について保険法人が現場検査を行い、躯体の性能がチェックされて履歴に残るため、中古物件として売却する際にも役立つとみられています。資産価値の向上や売却時の有利さにつながるのは区分所有者にとっては大きなメリットで、大規模修繕に対する合意形成の促進にもプラスとなりそうです。
◆保険の対象は、すべての規模の鉄筋コンクリート造(RC)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC)または鉄骨造の住宅で、団地であっても、契約は1棟ごとに締結されます。
◆保険を掛けるのは、これら共同住宅等の大規模修繕工事業者。この保険料を工事費に上乗せするかどうかは、各業者の判断によります。
◆保険対象部分は、工事業者が締結した
(1)構造耐力上主要な部分、
(2)雨水の浸入を防止する部分、
(3)給排水管路、
(4)給排水設備、
(5)電気設備、
(6)防錆工事を行った手すり等である。
ただし、(1)または(2)のいずれかは必ず含めなければなりません。
(3)〜(6)だけでの契約はできません。
保険法人が定める施工基準に満たない場合は、保険契約を締結できません。
◆保険期間は、工事が完了し引渡し日から5年間。ただし、屋上防水等はオプションで10年に延長が可能です。
◆保険金は、保険対象工事の瑕疵が原因で、保険約款で定める事由(保険事故)に該当する場合に限って支払われます。ただし、工事業者が通常行う「工事品質保証」や「アフターサービス保証」等に比べると適用範囲や適用条件が厳しいので、契約する際には十分に確認しておく必要があります。
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